「え」
「美味しい。それにこのお茶は、すごく帆夏さんらしい」
「わ、たし……?」
「鮮やかに、考えてなかった取り合わせを投げ込んでくる。研究においても……お茶を淹れるとしても、帆夏さんは帆夏さんなんだと納得できる。なぜだろう、僕はいま、そのことがとてもうれしい」
「は、はあ」
「帆夏さん……」

微笑む北園さんと視線がぶつかって、カチリと嵌まるように離せなくなった。澄んだ瞳がただただキレイ。
息するのを忘れる、時間の感覚がとけてしまう。

「帆夏さん、このカウンターに置いてある石は何ですか? これは美しいと思います」
「え? ほ、ほんとですか」

北園さんが鉱物に興味を持ってくれた。
岩石から、ひょこひょこ乱立する絵の具のビリジアンを結晶させたような緑。

「エメラルドに似ているが、やや緑が深く見えるね」
翠銅鉱(ダイオプテーズ)です。エメラルドと勘違いされたこともあるくらい、透明度が高く綺麗な結晶もある鉱物です。大きな結晶になりにくいし、エメラルドより脆いから、こちらで大きい結晶の方が貴重かも。濃い緑に最近人気が出てきたんですよ」
 
情熱が喉元からあがってきたままの長い解説、いやじゃなかったかな?
北園さんをうかがえば、彼は笑いをこらえているみたい。