今週のお客さんは三人。
おしゃべりしに来てくれた石友さんと、カップル一組。
平穏だ。
あんなこと言っていたけれど北園さんは来なかった。
忙しいだろうし、私を勧誘に来たのは一瞬の熱に浮かされただけだったのかも。
週末も、平日となにも変わらない店内作業。
もっと週末用になにかした方がいいような、でもなにからすればいいのか……。
 
と、唐突な扉の開閉音がした。
お客さんだ! 私は飛びつくようあいさつする。

「いらっしゃいま……せ」

はりきった声がみるみるすぼまって、消失していった。
この人をお客さま、と呼べないと思ったからだ。
北園さん。
今日もてっぺんから靴の先まで完璧な美、そしてプレッシャー。
 
「えっと、また前の件ですか。私、お断りの気持ちに変わりありません。ここはお店なので、そういうお話を営業時間にされるのは困ります」

別に他のお客さんはいないけど、万が一もあるし。こう言えば、引き下がってくれないかと期待をこめて文句をつけた。

「一杯いただいていきます。席に案内してくれますか」