「君を必要としているんだ」
「ひ、ひえっ!?」

大きくてがっしりした両手に力が入る。
嫌な気がしない。がっしりして端正な手で、すべすべと触れ心地もいい。
心臓がバクバクして、できたらまだ離さないで! とわめく。

こんな現代の王子様みたいなカッコいい男性に、真剣に求められると、なんでも一つ返事でOKしてしまいそうになるよ……。

「帆夏さん……」
「は、はい」
「僕のところに、きてくれる?」
「は…………」

顔が、美形の顔の圧がっ。
そっぽ向いて直撃を回避しているけど、横目でもキラキラが視認できそう。
うっかり「はい」って答えそうになった自分を精一杯押し留める。

「だめ! だめですーー!!」

断られると、考えてなかったのか。断られ慣れてないのか。
私、特級の美貌を「まさか」って驚愕で固めてしまった。
美形は世の宝、悲しませるのは忍びないものがあるけど……。

だって、私はもう傷ついてるんだもの。
彼の望みには応じられない。

そう、半年前のあの日に、私はすっかり崩れてしまったのよ──