でも、でも……っ。北園さん、御曹司のお坊ちゃんなんだろうし、ザセツとかなんもなく王道を歩いてそう。そんな彼だから、きっと私が断る気持ち、わからないんだ。
折れたところから、立て直すのは力がいるんだよ。
内から湧き上がるか、外からもたらされるか、色々あるとして。

そもそも。店内に入った彼は、カフェだというのにコーヒーの一杯も頼まなかった。
北園さんが必要としているのは、ほんとのほんとに研究者の私だけ。
もう私が死んだと思っている私、それだけにしか興味がないことに、カチンときた。
──いくら御曹司でも、思い通りにできないことはあるんだからね。
でも最後また来るって、諦めないって、強気だったなあ。
どこまで本気? 忍耐がつづくかしら。