北園さんの表情が驚愕で固まった。
初対面の人に話せる事情じゃない。
でも街に戻ってまた研究するのは無理。
本心ではあるけど核心から逸らした答えで返す。

「ごめんなさい。閑古鳥だけど、数ヶ月先も続けられているかわからないお店だけど。私、沈むまではこの自分のお城に居たいです」
「帆夏さん」

北園さんの声音が一段落ちた。
合わせた目が、さっきまでの柔いものではなく狙い定める猛禽のように鋭い。
お話を断ったから当然だけど、美形が凄むと迫力がありすぎる。

「僕は、君を諦めきれません。……また来ます」
「え……あきらめ、ない?」

これには返事が不要と判断されたらしい。北園さんはさっと背を向け店内を出る。
ウィンドウの向こう、北園製のEV車がなめらかに走り去っていった。