はじめ私の事情を深く聞かずに鍵を渡してくれた母は、そのまま私が世ズレしちゃうのを心配したみたい。
それは親としてフツーなんだけど。
叔父さんも、一族……いや、地域ぐるみで、私の再起の世話を焼きたがった。

いったいどう伝わったんだろうね……。

「お姫さんのお孫の帆夏さん、都会で騙されて心が折れちゃったらしい」とか?来たばかりは、同情もあってか、ご近所さんからお野菜やおかずのおすそ分けがしょっちゅうだった。

「帆夏ちゃん、やりたいことないかい? なんでもいってごらん」と叔父さんにやさしく訊かれて。
「カフェとかやってみたいと思ったことあります」と軽い気持ちで憧れを言ったら、あれよあれよという間に寂れた商店街の一店舗を格安で貸してもらえるから、と話が転がってしまった。
もしかしたら不良債権を早く落ち着けたいとも思われていたのかもしれない。
 
「お膳立てはするから、食品衛生士ほか勉強して資格と許可を取るんだよ」と叔父さんが提案したロードマップをこなすよう求められた。
「そこまで本気ではなく思いつきでした」なんて断れない雰囲気だった。

やんわり『お姫さんのお孫さんがニートなんてありえないんだよ』って外堀を固められてしまった。