陽二さんに連れられて着いた場所は、寂れた工場跡でしたの。

わたくしは来る途中、『はむら』さんについて色々質問をしましたわ。

陽二さんはとても親切に、『はむら』さんが『羽村 彰宏(はむら あきひろ)』という名前であるのと、彼が3年生で、蘭海高校で『頭(あたま)』をはっている―――つまり彼らにとっての中心人物だと教えてくださいました。

廃工場に着いて中に入ると、そこには使わなくなった机などが散乱していて、その机の上に、あの羽村さんが座っていたの!
わたくし、その小説の中のような構図に思わず嬉しくなってしまって、

「羽村さん!」

陽二さんを差し置いて、声をかけてしまいましたの。

彼は振り返るとわたくしを胡散くさそうに見て、

「陽二、誰だコイツ」

と短くいいましたわ。

ですのでわたくし、羽村さんの前に進み出て、挨拶しましたの!
そう、まずは挨拶が大事ですものね!

「初めまして、いえ、本当は2度目なのですが、わたくし円城 美羽と申します」

そう言って、とびきりの笑顔を浮かべましたの。

けれど、

「陽二……なんでこんなガキ連れてきた?」

と、陽二さんが責められてしまい……

「羽村さん!陽二さんは悪くありませんわ!わたくしが無理を言ってここに連れてきてもらったんです」

そう言いましたの。
羽村さんはチラッと私の方を見て、少し気だるげに

「で?白華のお嬢が何の用だ」

と、やっとわたくしに言葉を向けてくださいましたの!

わたくし、本当に嬉しくて、これはもう言うしかない!そう思いました。

すーはー。
大きく深呼吸。
羽村さんや陽二さん、粟嶋やその他の不良の皆さんが見守ってくださる中、わたくしは思い切ってその言葉を口にしました。