あるうららかな春の日、わたくし円城 美羽(えんじょう みう)は、とある高校にやってきましたの。
その学校というのは、不良さんたちがたくさん集まっているという『蘭海(らんかい)高校』―――通称、蘭高と呼ばれていると教えてもらいましたわ。

わたくしにそれを教えてくれたのは、同じ白華(しらはな)中学校に通う幼馴染の西園寺 夏乃子(さいおんじ かのこ)ちゃん。
西園寺グループ総帥のお孫さんで、とっても明るくて可愛らしくて、わたくし大好きですの!そんな彼女に、わたくしはどうしても不良さんたちの集まるところを知りたくて、聞いたのです。

どうしてそんな事を聞いたのかは、これからお話いたしますわね!


 そもそものお話は、わたくしが本屋さんでとある一冊の本を手に取ってしまった事から始まりましたの。
わたくし、本が大好きで、その中でも特に小説が好きなんです。だって小説って、読むことで自分が知らない世界の話や、心がおどるような体験を出来るでしょう?
この日も、学校の帰り道に寄った本屋さんで、運命の出会いを果たしてしまったの。

『不良な君に恋してる!』

それは、ライトノベルというわたしたちの様な年代をターゲットにした小説で、その中でもこの本は恋愛小説。
タイトルにはさほど興味をそそられなかったのだけど、わたくしの目はその本の帯にくぎ付けになりましたの。

『不良くんに恋したら、人生変わっちゃいました!』

人生が変わるほどの恋、それがどのようなものなのか、わたくしは非常に興味をそそられました。
だって、人生が変わっちゃうんですのよ?
それってとっても、楽しそうなことじゃなくって?


―――そんなわけで、わたくしはワクワクドキドキしながらその本を手に取って、レジへと向かったのです。

 その夜、わたくしは人生で初めての徹夜というものをしてまで、この小説を夢中で読みました。そして早朝のスズメの声を聴きながら決意したのです。

『絶対に不良さんと恋をする!』

と。