家までの方向が一緒な私たちは学校を出た後、基本一緒に帰るのが日課になっていた。


「あ、今日親に送ってもらったから傘無いんだ。愛芽、傘入れて」


「え〜葵生と相合い傘ー?」


「嬉しいって顔だな」


軽く葵生の胸をグーパンして、でも内心嬉しくて本当に顔に出てしまってないか焦る。

相合い傘なんて初めてだ。


「行くか」

スマートに傘を持ってくれて、しかも私が慣れないように私の方に傘を傾けてくれてる。


「葵生、それじゃ葵生が濡れちゃう」


「いい。愛芽の傘なんだし」


「だめ!だったら私走って帰るよ!?」


そう言えばちゃんとお互いが慣れないように傘を持つだろうと思い言ったのだけれど、葵生は私の肩を寄せ、私たちの距離はさらに近くなった。


肩が触れ、触れたとこが熱を帯びて熱くなる感覚がした。


「愛芽、顔真っ赤」


何も言えず顔を真っ赤にして俯く私の顔を覗き込むようにして葵生が意地悪な笑みをみせる。


「……。」


「なーに黙ってんの。愛芽ちゃん?」


言葉を発せばボロがでそうで、私は葵生を無視して黙り続けた。

すると葵生は急に足を止め、私の方に体を向けた。


「愛芽、こっち見て」


「……無理」


葵生の声のトーンが変わっていて、なんだか雰囲気が違う。

「愛芽」

もう一度名前を呼ばれ、私は渋々顔をあげた。

身長差がある為上目づかいのようになるが、そんな戦略をたてる余裕はない。


「何でそんなに可愛いの」


「ーーーっ///」


恥ずかしさで顔が熱くなり、更に真っ赤になってるのが自分でも分かった。

からかってるのかなんなのか、でも、そう言った葵生の目があまりにも優しくて……



「愛芽、俺の気持ち気づいてる?」


「えっ……どういう、こと……?」


「……分かんない?」


ドクン、と。大きく心臓が鳴る。

恋愛経験の無い私でも、流石に分かる。

こんなにドキドキして苦しいくらいなのに、葵生から目を逸らす事が出来ない。



葵生の目が、そうさせてくれない。