徒歩15分ほどで学校に到着し、HRの時間までこの学校で唯一本当の友達といえる幼なじみの村吉佳奈(ムラヨシカナ)と時間を潰す。


彼女は隣のクラスで、この時間はいつも廊下で他愛もない話をしてる。


「実はさ、隣の席の男子が結構イケメンなんだ〜」

「え、なに佳奈ちんもう好きな人できたの!?」

「まだお気に入りってところ!これから育てていくの!」


昔から恋愛上級者の佳奈ちんは美人でスタイルも良くて彼氏が絶えない。おそらく、隣の席の彼も佳奈ちんに落ちるのであろう。

「へー、次は何日もつかな〜」

「ちょっと愛芽〜!せめて何ヶ月、でしょーが!」


佳奈ちんはそう言って私のおでこをビシッとデコピンしてきた。

この時間が1番楽しい。あまり人に心を開くのは得意じゃない為、入学して2ヶ月、新しく友達と呼べる人はまだ出来ていない。

好きな人だなんて到底ありえない話だ。


HRが始まり、担任の熱血な声に私の気だるさがどんどん増してく。

あーあ、早く学校終わんないかな〜、、、なんて考えていると何やら騒がしくなっているのに気づいた。


どうやら席替えをやるらしい。

席替えくらいでどうしてそんなに盛り上がれるのか私には理解できない。とりあえず、後方の席か端の方になれればラッキーだな、くらいで。


クラスで仲良く話せる子もいないし、話しかけられても最低限の返ししかできない、上っ面の自分でいるだけ。


こんな自分が嫌になる。佳奈ちんみたいに誰とでも仲良くなれるスキルが欲しかった。


そうすれば、私にだって今頃友達と呼べる人がこのクラスにもいたんじゃないか…そんな叶いもしない願いが頭を過ってしまう。


まぁ、きっと女子のほとんどは友達どうこうではなく"彼"の近くの席になれるかで騒いでいるんだろうな。