ガタンゴトン…
揺れる車内の音。
私と川口さんは押上駅に向かう電車に乗っていた。無言でつり革につかまっている私の顔が車内のガラス窓に映っている。その顔は浮かない表情をしていた。思わずホウと小さな溜息をついた時…。
「ねえ…あれで良かったの?」
「え?」
見ると、隣に同じようにつり革につかまる川口さんが私を見下ろしていた。
「や、やだ。ごめんなさい!私、ついぼ~っとして…」
慌てて視線をそらせた。どうしよう…やってしまった。川口さんの存在を…すっかり忘れていた!だけど川口さんは私に存在を忘れられていたことに気づかない様子で声を掛けてくる。
「さっきの男誰?差し支えなければ…聞いてもいい?」
いつの間にか川口さんの敬語が外れていた。でも私もその方が話しやすい。きっと年だって私と変わらないだろうし…。
「あの人は私と同い年の幼馴染なの」
「ふ~ん。お姉ちゃんて…」
「私にはね、5歳年上の姉がいて彼は私の姉の恋人だよ」
「え…?」
川口さんの顔に怪訝そうな表情が浮かぶ。うん、きっと何かおかしいって感じたんだろうね…。
「昨日、姉と私と…亮平でちょっとしたトラブルがあって、その謝罪の意味で亮平は私に今日は奢ってやるから出掛けようって誘われていたんだけど断ったの。だって亮平は姉の恋人だから」
恋人…何度この言葉を口にしても、その度に私の胸がチクリと痛む。我ながら未練がましくて嫌気がさしてくる。
「亮平ってさっきの男の名前だよね?」
「うん。そうだよ」
「ひょっとして…好きなの?」
「え?!」
不意を突かれた質問に思わず私は驚いてしまった。
「いや…いいよ…別に答えなくても。今の加藤さんの様子で分かったから」
川口さんは少し寂し気に私を見て笑った。
「楽しみだなぁ~プラネタリウム見るの。一度も行ったことが無いからさ」
「川口さん…」
するとちょうどその時、車内に押上駅到着のアナウンスが流れた。
「よし、着いたみたいだ。行こう」
川口さんは笑顔で私に声をかけた――
****
「あ~楽しかった。映像もすごい迫力だったし、こんなに興奮したのは久しぶりだよ」
プラネタリウムを出ると、早速川口さんは話を始めた。
「そう?そんなに良かった?そこまで喜ばれるとこっちも一緒に来て良かったなって思うよ」
いつの間にか私たちはすっかり長年の友達のような口調で話をしていた。
「ねぇ、この後すぐに帰るのもなんだし、ちょうどお昼の時間帯だからスカイツリーで食事して帰らないか?」
案内板の前を通りかかった川口さんが声を掛けてきた。
「うん。そうだね。3階にフードコートがあるみたいだからそこに行こうか?」
「よし、決まりだ。なら早速行こう」
川口さんはクルリと背を向けると、エレベーター乗り場へ向かう。私も後に続き、歩いていると意外に人が多くて、思うように歩けずに前を歩く川口さんを見失ってしまった。
「あ…まずい」
どうしよう?
キョロキョロ歩きながら歩いていると、前方に私を探している川口さんが目に入った。
「あ」
すると向こうも気づいたのか、人込みをかき分けながら私の方に向かって歩いて来た。
「ごめん加藤さん。はぐれちゃって…」
「ううん。見つかったから大丈夫だよ」
すると川口さんは私をじっと見つめ、突然左手を繋いできた。
「一緒に行こう」
「え?」
そして私は川口さんに手を引かれるまま、歩き出した――
揺れる車内の音。
私と川口さんは押上駅に向かう電車に乗っていた。無言でつり革につかまっている私の顔が車内のガラス窓に映っている。その顔は浮かない表情をしていた。思わずホウと小さな溜息をついた時…。
「ねえ…あれで良かったの?」
「え?」
見ると、隣に同じようにつり革につかまる川口さんが私を見下ろしていた。
「や、やだ。ごめんなさい!私、ついぼ~っとして…」
慌てて視線をそらせた。どうしよう…やってしまった。川口さんの存在を…すっかり忘れていた!だけど川口さんは私に存在を忘れられていたことに気づかない様子で声を掛けてくる。
「さっきの男誰?差し支えなければ…聞いてもいい?」
いつの間にか川口さんの敬語が外れていた。でも私もその方が話しやすい。きっと年だって私と変わらないだろうし…。
「あの人は私と同い年の幼馴染なの」
「ふ~ん。お姉ちゃんて…」
「私にはね、5歳年上の姉がいて彼は私の姉の恋人だよ」
「え…?」
川口さんの顔に怪訝そうな表情が浮かぶ。うん、きっと何かおかしいって感じたんだろうね…。
「昨日、姉と私と…亮平でちょっとしたトラブルがあって、その謝罪の意味で亮平は私に今日は奢ってやるから出掛けようって誘われていたんだけど断ったの。だって亮平は姉の恋人だから」
恋人…何度この言葉を口にしても、その度に私の胸がチクリと痛む。我ながら未練がましくて嫌気がさしてくる。
「亮平ってさっきの男の名前だよね?」
「うん。そうだよ」
「ひょっとして…好きなの?」
「え?!」
不意を突かれた質問に思わず私は驚いてしまった。
「いや…いいよ…別に答えなくても。今の加藤さんの様子で分かったから」
川口さんは少し寂し気に私を見て笑った。
「楽しみだなぁ~プラネタリウム見るの。一度も行ったことが無いからさ」
「川口さん…」
するとちょうどその時、車内に押上駅到着のアナウンスが流れた。
「よし、着いたみたいだ。行こう」
川口さんは笑顔で私に声をかけた――
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「あ~楽しかった。映像もすごい迫力だったし、こんなに興奮したのは久しぶりだよ」
プラネタリウムを出ると、早速川口さんは話を始めた。
「そう?そんなに良かった?そこまで喜ばれるとこっちも一緒に来て良かったなって思うよ」
いつの間にか私たちはすっかり長年の友達のような口調で話をしていた。
「ねぇ、この後すぐに帰るのもなんだし、ちょうどお昼の時間帯だからスカイツリーで食事して帰らないか?」
案内板の前を通りかかった川口さんが声を掛けてきた。
「うん。そうだね。3階にフードコートがあるみたいだからそこに行こうか?」
「よし、決まりだ。なら早速行こう」
川口さんはクルリと背を向けると、エレベーター乗り場へ向かう。私も後に続き、歩いていると意外に人が多くて、思うように歩けずに前を歩く川口さんを見失ってしまった。
「あ…まずい」
どうしよう?
キョロキョロ歩きながら歩いていると、前方に私を探している川口さんが目に入った。
「あ」
すると向こうも気づいたのか、人込みをかき分けながら私の方に向かって歩いて来た。
「ごめん加藤さん。はぐれちゃって…」
「ううん。見つかったから大丈夫だよ」
すると川口さんは私をじっと見つめ、突然左手を繋いできた。
「一緒に行こう」
「え?」
そして私は川口さんに手を引かれるまま、歩き出した――