「え…?亮平…どうしてこの駅に…?」
すると亮平は無言で近づき、私の前で立ち止まった。
「だって昨夜メールしただろう?明日何所かへ出かけようかって。何か奢るって言っただろう?」
そしてチラリと私の隣に立つ川口さんに視線を送る。
「でも、私・断ったよね?今日は用事があるからお姉ちゃんと過ごしてあげてって」
すると今度ははっきり私の斜め後ろに立っていた川口さんに視線を移す。
「ふ~ん…そっか。男とデートだったのか?だったらはっきりそう言えば良かっただろう?」
「ち、ちが…っ」
だけど私はそこまで言いかけて黙ってしまった。こんなの…誰がどう見てもデートしているようにしか見えないと思ったから。一方川口さんはいきなり現れた亮平に戸惑いながらもデートと言われて顔を赤く染めている。
「ふ〜ん……去年までは男と一緒に暮らしておいて、今は1人暮らしになってまた別の男を見つけたのか?随分変わり身が早いな?鈴音…お前ってそういう女だったのかよ?」
何故かその口調は…酷く責められているように感じた。
「亮平。待って、そういう女ってどういう意味なの?」
「男にだらしないって意味だよ」
吐き捨てるように言う亮平。
「そ、そんな…」
すると今まで黙っていた川口さんが口を挟んできた。
「おい、さっきから黙って聞いていればあんまりな言い方じゃないか?これじゃあ加藤さんが気の毒だ。それに俺は彼氏じゃない。近所に住んでるだけだ」
「へぇ…でもその割には親しげだったな?第一何故鈴音の苗字を知ってるんだ?」
「それは俺が加藤さんの引っ越しを受け持った担当者だったからだ」
「ふん…そう言う訳か?つまりお前は鈴音が気に入って、住所を知っているから付きまとっているのか?いいのかい、それって…職権乱用っていうんじゃないのか?」
「亮平っ!」
もう駄目だ、これ以上黙ってみていられなかった。
「鈴音、先に約束していたのは俺だろう?出かけるなら俺と行こう」
亮平は私の右腕を掴んできた。どうして?どうして私に構うのよ?亮平はお姉ちゃんの恋人でしょう?
「いや!離して!」
腕を振り払おうとしても亮平の力が強すぎて振り払えない。
「おい!加藤さんが嫌がっているだろう?離せよ!」
川口さんが亮平の腕を掴んだ。
「何だよ、お前は!俺と鈴音の事に口出すな!」
亮平が川口さんを睨み付ける。
「何だ?痴話喧嘩か?」
「やだ…男の人が2人で女の人を取り合ってるわ…」
「何かドラマみたいだな…」
気付けば私達は街行く人々から見物されていた。
「お願いっ!2人ともやめて…!」
私の言葉に、2人はハッとなり、ようやく冷静さを取り戻した。私は亮平に向き直った。
「亮平…昨日、お姉ちゃんが私と亮平が一緒にいるとどんな顔をするか分ってるでしょう?」
「あ…ああ…」
亮平はコクリと頷いた。
「だったらもうやめて。これ以上私はお姉ちゃんに憎まれたくないの。亮平は私に構わないでお姉ちゃんの傍にいないと」
「鈴音…」
亮平の顔は心なしが青ざめていた。
「折角来てもらって悪いけど、そういうわけだから帰って。お願い」
私は胸をズキズキ痛めながら亮平を見た。本当は追い返したくは無かったけどお姉ちゃんに恨まれる方が今の私は一番辛いから…。私は亮平の返事を待たずに川口さんを見た。
「ごめんなさい。お待たせして。それじゃ行きませんか?」
「え?でも…」
川口さんは戸惑いの表情を浮かべながら私の背後に立っている亮平をチラリと見た。
「いいんです。もう…昨日から断っているので」
そして私は亮平をチラリと見ると、川口さんの前を歩きだし、川口さんは黙って私の後に続いた。
改札を通り抜ける時、後ろを振り向くとそこには悲し気な亮平が1人佇んでいた――
すると亮平は無言で近づき、私の前で立ち止まった。
「だって昨夜メールしただろう?明日何所かへ出かけようかって。何か奢るって言っただろう?」
そしてチラリと私の隣に立つ川口さんに視線を送る。
「でも、私・断ったよね?今日は用事があるからお姉ちゃんと過ごしてあげてって」
すると今度ははっきり私の斜め後ろに立っていた川口さんに視線を移す。
「ふ~ん…そっか。男とデートだったのか?だったらはっきりそう言えば良かっただろう?」
「ち、ちが…っ」
だけど私はそこまで言いかけて黙ってしまった。こんなの…誰がどう見てもデートしているようにしか見えないと思ったから。一方川口さんはいきなり現れた亮平に戸惑いながらもデートと言われて顔を赤く染めている。
「ふ〜ん……去年までは男と一緒に暮らしておいて、今は1人暮らしになってまた別の男を見つけたのか?随分変わり身が早いな?鈴音…お前ってそういう女だったのかよ?」
何故かその口調は…酷く責められているように感じた。
「亮平。待って、そういう女ってどういう意味なの?」
「男にだらしないって意味だよ」
吐き捨てるように言う亮平。
「そ、そんな…」
すると今まで黙っていた川口さんが口を挟んできた。
「おい、さっきから黙って聞いていればあんまりな言い方じゃないか?これじゃあ加藤さんが気の毒だ。それに俺は彼氏じゃない。近所に住んでるだけだ」
「へぇ…でもその割には親しげだったな?第一何故鈴音の苗字を知ってるんだ?」
「それは俺が加藤さんの引っ越しを受け持った担当者だったからだ」
「ふん…そう言う訳か?つまりお前は鈴音が気に入って、住所を知っているから付きまとっているのか?いいのかい、それって…職権乱用っていうんじゃないのか?」
「亮平っ!」
もう駄目だ、これ以上黙ってみていられなかった。
「鈴音、先に約束していたのは俺だろう?出かけるなら俺と行こう」
亮平は私の右腕を掴んできた。どうして?どうして私に構うのよ?亮平はお姉ちゃんの恋人でしょう?
「いや!離して!」
腕を振り払おうとしても亮平の力が強すぎて振り払えない。
「おい!加藤さんが嫌がっているだろう?離せよ!」
川口さんが亮平の腕を掴んだ。
「何だよ、お前は!俺と鈴音の事に口出すな!」
亮平が川口さんを睨み付ける。
「何だ?痴話喧嘩か?」
「やだ…男の人が2人で女の人を取り合ってるわ…」
「何かドラマみたいだな…」
気付けば私達は街行く人々から見物されていた。
「お願いっ!2人ともやめて…!」
私の言葉に、2人はハッとなり、ようやく冷静さを取り戻した。私は亮平に向き直った。
「亮平…昨日、お姉ちゃんが私と亮平が一緒にいるとどんな顔をするか分ってるでしょう?」
「あ…ああ…」
亮平はコクリと頷いた。
「だったらもうやめて。これ以上私はお姉ちゃんに憎まれたくないの。亮平は私に構わないでお姉ちゃんの傍にいないと」
「鈴音…」
亮平の顔は心なしが青ざめていた。
「折角来てもらって悪いけど、そういうわけだから帰って。お願い」
私は胸をズキズキ痛めながら亮平を見た。本当は追い返したくは無かったけどお姉ちゃんに恨まれる方が今の私は一番辛いから…。私は亮平の返事を待たずに川口さんを見た。
「ごめんなさい。お待たせして。それじゃ行きませんか?」
「え?でも…」
川口さんは戸惑いの表情を浮かべながら私の背後に立っている亮平をチラリと見た。
「いいんです。もう…昨日から断っているので」
そして私は亮平をチラリと見ると、川口さんの前を歩きだし、川口さんは黙って私の後に続いた。
改札を通り抜ける時、後ろを振り向くとそこには悲し気な亮平が1人佇んでいた――