「しかし驚いたな。あの神社が、メリーゴーランドみたいに回っていたなんて」

 冬夜くんの言葉に、私もうなずく。
 あのお化け屋敷、神社に入る前の商店街と、出た後の商店街は、別々のセットだったんだとか。私たちが入ったあと、神社の社殿ごと回転して、妖怪のスタッフたちがいるセットに変わっていたんだという。
 どうりで突然、妖気とかが漂うわけだよ。私もびっくりした。そういう工夫を知ると、余計に「バラしてよかったのかな」と思って、何となく悪いことをした気持ちになる。
 でも、結果的にはよかったのかな。 
 偶発的に心霊スポットになってるなら危ないけど、そもそも妖怪たちによってちゃんと管理されているなら話は変わってくる。店長がゴリ押しで「冬夜くんと行ってきなさい」と言ったのは、最初から安全だと知っていたからだろう。……最初からそうだと言ってくれたらよかったのに。
 うんうん、とうなずいていると、何故か冬夜くんが固まっていた。

「そ、そうだよな……ナツのためにやってたんだった……すっかり忘れてた……」

 大きな手のひらで顔を覆う冬夜くん。
 その隙間から、赤くなった顔が見えた。
 その意外な表情に、私は思わず目をパチクリ。

「もしかして、楽しかったの? 本当に」
「……かなり」

 気まずそうに、冬夜くんが言う。
 私はてっきり、気遣いで言ってもらっているのだと思ってた。

「……小野がいてくれたから、かな」
「私?」
「同級生で遊ぶのは久しぶりだったし、それに……小野がいたら、多分何とかなるって思っていたんだと思う」

 そんなに頼られていたのかと、私の顔まで熱くなってしまった。
 同時に、こうも思う。
 もしかして店長は、冬夜くんのためにこの時間を設けたんじゃないかと。
 夏樹くんがいたら、彼は間違いなく「お兄さん」として動くだろう。それは、夏樹くんの危険を誰よりも察して、いざと言う時は一人で危険に対処しなくちゃいけない。
 それって、きっとずっと緊張している。
 夏樹くんと離れて、学校で過ごしている時だって、オカルト研究部を作って、夏樹くんのためにたくさんの調べ物をしているんだ。気が休まる時間なんて、ないんじゃないか。

「……せっかくだし、もう少し遊ばない?」

 するり、と出てきた言葉に、自分でも驚いた。
 驚いた顔で冬夜くんが私を見る。
 冬夜くんを思って――なんて、当人に言ったら、店長の気遣いが無駄になってしまう。私は早口で続けた。