受付を済ませた私たちは、目隠ししたままエレベーターに乗せられる。
 そして、チーンという音が鳴ったあと、スタッフさんに手を引っ張られ、目隠しを外された。
 その後スタッフさんから説明を受け、ブザーを渡された。リタイアしたい時、これを引っ張ると、スタッフさんが来て、お化け屋敷から出られるらしい。なお、ミッションをクリアすると、景品がもらえるとか。
 どこからか、ジジジ……という、ざらついた機械音が聞こえる。真っ直ぐ伸びる廊下の奥には、両開きの扉があった。
 案内するように床に埋め込まれたライトが、暗闇を割くように眩しい。
 そのライトを頼りに、私たちは真っ直ぐ進む。
 その時だった。
 私より前に歩いていた冬夜くんが、私の右手を掴んだのだ。

「ひゃあ!?」
「え!?」

 思わず叫んでしまい、つられて冬夜くんも声を上げる。

「どうした!? 何かいたのか!?」

 眼鏡を掛けた冬夜くんが、辺りを見渡す。
 私も、まさか自分の口からこんな悲鳴が出てくるとは思わなくて、説明しようにも声にならず、口をパクパク動かすだけだった。
 やがて、冬夜くんが「俺には視えないんだが」と言って私を見て、私の視線をたどる。
 繋がれた手を見たとたん、ものすごい勢いで手が離なれた。

「ごめんごめんごめん!」

 いつもよりワントーン高い声で、冬夜くんが謝り倒してきた。

「こういう暗いところに行くと、ナツの手を繋がないと神隠しに遭うんじゃないかって、だからいつものくせで、」

 暗くてもわかるぐらい顔を赤くする冬夜くん。つられて、思わず私も早口でまくし立てた。

「そ、そうだよね!? やっぱり、安全性を考えたら手を繋いだ方がいいよね!? 手繋ごっか!」

 ――私は一体何を言っているの?
 勝手に動く口にとまどいつつ、頭の中で何かが「そうかもしれない」とささやいてくる。というか、丸みこんでくる。
 冬夜くんも、私の勢いに押されて、「そ、そうだな」と改めて私の手を繋いだ。
 しっとりとして、私より大きな手だった。

「……ごめん、左でお願い。利き手が封じられてると、何かあった時に対応できない」
「あ、悪い……」

 中々しまらなかった。