チャラチャラチャラーン!! バンバンバン!!
 あちこちから、色んな音が大音量で聴こえる。
 ここは、『グリーンワールド』内にあるゲームセンターだった。

「あれ!? あれ!?」

 私がパニックになっているうちに、画面には『GAME OVER』とドット字で書かれていた。
 音楽ゲーム、シューティングゲーム、格闘ゲーム。色んなゲームをしたけど、全部負けている。

「……小野、ひょっとしてこういうの、あまりしたことない?」

 冬夜くんが苦笑いで私を見る。
 ごめんなさいね、操作が慣れなさすぎて、アバターが変な方向に行ったりして……。

「ごめん冬夜くん、こっちもお願いしていい?」
「わかった。……というか、これ小野一人だったら詰んでいたな……」

 冬夜くんの言葉に、本当にそう、と私はうなずく。
 この『グリーンワールド』には、様々な怪異の噂が潜んでいる。そのうち、ゲームセンターの怪異は、危険度は低いが、私一人では遭遇することができない怪異。
 なぜならこの怪異、『対戦型アーケードゲームに勝利したら現れる、幻のアーケードゲーム』だから。
 その名前は、『ソムニウム』。
 どんなゲームなのかは不明。けど、そのゲームをすると、そのゲームの世界に取り込まれる……らしい。
 冬夜くんは、ほとんど無駄な動きをすることなく、画面上の敵を倒していく。
 ほんの数分で、彼は一番難易度の高いステージをクリアした。

「すご……」

 簡単のように見えるけど、そんなことないのはさっき実感した。

「中学に上がる前は、ナツと良くゲームセンターに入り浸っていたからな。久しぶりだったけど、腕は鈍ってないようだ」

 冬夜くんが笑う。

「中学上がってからは行ってないの?」

 私が聞くと、冬夜くんは「中学に入ってからは、日中動けなくなってな」と苦笑いした。

「休みの日は夕方まで寝てしまうし、夕方は逢魔が時だろ? 妖怪たちが出てくる。
 一緒に遊びに行くことはほとんどなくなったんだ」
「……中学に入ってから?」

 ちーちゃんは冬夜くんのことを、『低血圧』だから朝が弱いと言っていた。第二次性徴期は身体の作りが変わっていくから、起立性調節障害による低血圧は不思議ではないのだけど。

「そういえば、今は体の方大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。そう言えば、ここに入ってから調子がいいな」

 珍しい、と冬夜くんが言う。
 本人が言う通り、顔色はすっかり良くなっていて、無理をしているようには見えない。
 それはよかったのだけど、私の胸の中で何かがつっかえた。……けど、うまく言語化できなくて、とりあえずしまっておく。