……のが、数時間前。
なんということでしょう。私、今、絡まれています。
「おい、お前。何してんだ」
コンビニの前。
漫画でしか見たことの無い詰襟の制服に、オールバックで決めている男子が、私の目の前に立ち塞がっていた。
何でこうなったかと言うと、ギュウギュウ詰めに駐輪された自転車を、私がうっかりドミノ倒ししたから。停める場所がなくて、かつ、一つずつ動かすのが面倒で割り込もうとしたのがいけなかったよ。
「もっと丁寧に扱えや! テメェどこ中だこらぁ!」
制服見てわかんないのかな?
とか思ったけど、私自身も彼らの制服見てもわかんない。こんな服装、どっかの成人式のニュースで見たな。
というか、この町来てビックリしたのだけど、自転車も派手だな。なんならここに並んでいた自転車、ゲーミンク色だし。
とか何とか考えてたら、黙ってしまっていると勘違いされて、「何か言えや!」と言われる。その時だった。
「何してるんだ、こんなところで」
後ろから、冬夜くんの声が聞こえた。
制服じゃなくて、私服の姿だ。家が近いんだろうか。
「竜二、彼女はうちの生徒だが、何かあったか?」
冬夜くんがそう言うと、怒鳴っていた男子が舌打ちした。
「冬夜、後で言っておけよ。モノは丁寧に扱えってな」
そう言って、彼は自転車を起こして去っていった。
……丁寧に他の人の自転車も起こして、ついでにヘルメットも被って。
「大丈夫か、小野」
「うん、ありがとう。冬夜くんが来てくれて、助かったよ」
喧嘩することなく、一言だけでおさめるなんてすごい。
私、基本妖怪相手と戦うから、人間の、それも中高生との戦いなんてしたことない。このまま掴み合いになったら、どれぐらいの力なら壊れずに済むのか悩んじゃったよ。
って言ったら、
「まるで力加減がわからない、巨人みたいなセリフだな」
……なんで冬夜くんから、貼り付けた笑みを向けられてるんだろ、私。
「ところで、さっきの……人たちは?」
「ああ、暴走族だ」
「……スピードが出なさそうな暴走族だね」
近頃の暴走族は、盗んだバイクじゃなくて、ゲーミング色の自転車で暴走するのか。
「いや、あれ電動自転車だから、普通にスピード出るぞ」
「そこは時代が進んでんの!?」
「冗談だ。道路交通法で、既製品の電動自転車はそこまでスピードは出せない。そもそも、竜二は暴走族じゃなくて、自転車愛が強いだけだ」
なるほど。おまけに電動自転車なら、電気で動く分壊れやすいだろうし、高いだろうな。少々過剰な気もするけど、自転車倒して謝らなかった私も悪い。
そう言うと、冬夜くんはちらっと私の自転車を見て、こう言った。
「……多分、そういうことじゃないだろうな」
「え?」
「いや。――この町は自転車が主な交通手段だから、何かあったら、『ヤマグチ』に行くといい」
そこ、ほとんど金取らないでメンテナンスしてくれるから。冬夜くんの言葉に、なるほど、と私はうなずく。
「けど、ちょうどよかった。小野、少しいいか」
私を見据えて、冬夜くんは言った。
なんということでしょう。私、今、絡まれています。
「おい、お前。何してんだ」
コンビニの前。
漫画でしか見たことの無い詰襟の制服に、オールバックで決めている男子が、私の目の前に立ち塞がっていた。
何でこうなったかと言うと、ギュウギュウ詰めに駐輪された自転車を、私がうっかりドミノ倒ししたから。停める場所がなくて、かつ、一つずつ動かすのが面倒で割り込もうとしたのがいけなかったよ。
「もっと丁寧に扱えや! テメェどこ中だこらぁ!」
制服見てわかんないのかな?
とか思ったけど、私自身も彼らの制服見てもわかんない。こんな服装、どっかの成人式のニュースで見たな。
というか、この町来てビックリしたのだけど、自転車も派手だな。なんならここに並んでいた自転車、ゲーミンク色だし。
とか何とか考えてたら、黙ってしまっていると勘違いされて、「何か言えや!」と言われる。その時だった。
「何してるんだ、こんなところで」
後ろから、冬夜くんの声が聞こえた。
制服じゃなくて、私服の姿だ。家が近いんだろうか。
「竜二、彼女はうちの生徒だが、何かあったか?」
冬夜くんがそう言うと、怒鳴っていた男子が舌打ちした。
「冬夜、後で言っておけよ。モノは丁寧に扱えってな」
そう言って、彼は自転車を起こして去っていった。
……丁寧に他の人の自転車も起こして、ついでにヘルメットも被って。
「大丈夫か、小野」
「うん、ありがとう。冬夜くんが来てくれて、助かったよ」
喧嘩することなく、一言だけでおさめるなんてすごい。
私、基本妖怪相手と戦うから、人間の、それも中高生との戦いなんてしたことない。このまま掴み合いになったら、どれぐらいの力なら壊れずに済むのか悩んじゃったよ。
って言ったら、
「まるで力加減がわからない、巨人みたいなセリフだな」
……なんで冬夜くんから、貼り付けた笑みを向けられてるんだろ、私。
「ところで、さっきの……人たちは?」
「ああ、暴走族だ」
「……スピードが出なさそうな暴走族だね」
近頃の暴走族は、盗んだバイクじゃなくて、ゲーミング色の自転車で暴走するのか。
「いや、あれ電動自転車だから、普通にスピード出るぞ」
「そこは時代が進んでんの!?」
「冗談だ。道路交通法で、既製品の電動自転車はそこまでスピードは出せない。そもそも、竜二は暴走族じゃなくて、自転車愛が強いだけだ」
なるほど。おまけに電動自転車なら、電気で動く分壊れやすいだろうし、高いだろうな。少々過剰な気もするけど、自転車倒して謝らなかった私も悪い。
そう言うと、冬夜くんはちらっと私の自転車を見て、こう言った。
「……多分、そういうことじゃないだろうな」
「え?」
「いや。――この町は自転車が主な交通手段だから、何かあったら、『ヤマグチ』に行くといい」
そこ、ほとんど金取らないでメンテナンスしてくれるから。冬夜くんの言葉に、なるほど、と私はうなずく。
「けど、ちょうどよかった。小野、少しいいか」
私を見据えて、冬夜くんは言った。