「まぁ……。でも、鍵の業者に頼めばよかった話じゃないですか。そういう提案をしなかったのはなぜですか。中川さんが焦っていて気づいていなかったにせよ。」


「月葉は無知なものですから、そういうことを知らなかったのかもですけど……。俺が提案しなかったのは……」


「元から好きだったんでしょ。違いますか?」


そう、なのかな。


確かに、俺が月葉の性格とかに憧れがあったのは事実だけど。


それが、最初から恋愛感情だったのか……?


「そんなわかりやすい顔して、生徒をたぶらかして楽しいんですか。中川さんのこと本気なんですか?」


「たぶらかしてません。あぁもう……本気ですよ。何なら付き合ってるんで。」


あっさりとそんなことを口にしてしまった。


言ってから遅くも後悔。


でも、旗本先生は知っていたかのように割と落ち着いていた。


この人、本当に腹黒い。


何を考えているかわからない顔をしている。


「もう帰りますか?」


「はい?さっきの話はもういいんですか?」


「別に、何か僕に言ってほしいことでもあったんですか?」


「いや別に。ただ何も追及されないんだなと。」


何もなく終わるんだったらそれでいいけど。


「じゃあ、僕はもう帰ります。紺野先生もどうぞ好きな時に。」