「いやぁ、何か本当に卒業って感じだな。」


「本当ですよ。思えば約1年前に紺野先生に拾ってもらったのがつい最近のことみたいで。」


「だな。そういえばご両親がまたイギリス行ったんだっけ?また長期出張なら家来てもいいぞ。」


「じゃあそうします。」


これを平然と聞いてるタクシーの運転手さんてすごいな。


まぁもっとひどい会話もあったんだろうけど。


「着きましたよ。」


運転手さんが止めてくれたのは、国内最高級と言われる、普通のビルの倍の高さはあるタワーの前だった。


紺野先生はお金を払うと、私にエスコートしてくれた。


「先生ずるい。こんなとこ来るなら私だってパーティードレスでも着てきたのに。紺野先生だけちゃっかり正装してるなと思ったら。」


「制服だって正装だよ。さ、行こうか。」


ビルの中にはぎらぎらとしたブランド品のお店がズラーっと並んでいた。


中にいるのはみんなファーや高級そうな革で着飾ったセレブっぽい人たち。


「すごっ、何この空間。」


「すごいだろ。」


「先生そんなにお金持ってたの?」


「まぁ、全部は月葉に使うためにあるし。」


サラリと女の子がキャーキャー言いそうなセリフを混ぜ込んできて……。


相変わらず、チャラさは顕在しているみたいだ。