前までは高い声で可愛くしゃべっていたけど、今は声が低く、所々にアクセントのとんだ話し方をしている。


「でも、月葉さんには申し訳ないことをしました。本当にごめんなさい。」


「えっ、何が?私の方こそ葵ちゃんのことに気づかないふりして申し訳ないことを……」


「覚えてますか、体育祭のこと。」


体育祭?


なんかあったけ、その時。


「月葉さん、障害物走のハードル、高くなかったですか?」


「あぁ、確かに7センチ?だか8センチだか高かった気もするけど。」


「それ、たまたま友達に頼まれて代わりに準備した私がやったんです。紺野先生と同じクラスで、仲の良かった月葉さんが羨ましかった。でも、結局何も変わらなかった。」


「そっか、あれ葵ちゃんだったんだね。」


「私、あんなことして何か変わると思ったのかな……自分の浅はかさがみじめです。本当に月葉さんには申し訳ありませんでした。」


まじまじと謝られるとちょっと気まずい。


「それに私、夏休みに会ったときとか、月葉さんに嫌味なことばっかり言って、月葉さんを傷つけました。」


「いいのいいの。もう過ぎたことだし、葵ちゃんが紺野先生を一途に思って、それで私をいじめるのは仕方ないこと。むしろ、人間だれしもそう思うこといっぱいあるよ。」