朝、荷物を前日にまとめていたのでそれを持ってタクシーで空港に向かった。


紺野先生は置手紙に『行ってきます』とだけ書いて、家を出て行ったらしい。


両親と合わせる顔がない。


これほど家族の帰りがむなしくなるなんて、いつ想像できたことだろう。


10時12分、両親が乗った飛行機が無事に到着した。


出てきた2人は私の顔を見て、小走りで向かってきた。


「ただいま、月葉。長い間留守にしちゃってごめんね。」


「そうだ、機内食をほとんど食べていないからどこかに外食しに行こうか。」


怒っているとか、そういう雰囲気はなかった。


むしろ心配そうに笑う2人の表情を見ていると、なんだか悲しくなってくる。


タクシーに乗って、家のそばにあるファミレスに入った。


「なんか日本食っぽいものを食べましょうか。」


「そうだな。それと、月葉に土産もあるんだよ。」


わざと話を逸らされているみたい。


私のこと、気遣ってくれてるのかな。


「月葉、朝ご飯はちゃんと食べたの?」


「うん。」


本当は食事が喉を通らなくて何も食べていないけど。


「嘘。何も食べてないでしょう。何か頼みなさい。」


親ってすごいな、子供の嘘がすぐにばれる。


そう言われた私も、ハンバーグステーキを頼んだ。