「でもなんで私なの? 可愛げないし。子供の頃から環くんに、言いたいことを言いまくりだったし」

「幼稚園の時、俺の姉さんたちから、俺を守ってくれたことがあったでしょ?」

「そうだったかな?」

「覚えてない? 自己中の姉二人が、芸能人の弟が欲しいって騒ぎだして」


 あっ、かすかに覚えてる。


「あの頃の環くん、絶対にイヤだって逃げ回ってたよね」

「なんど拒否しても姉さんたちは諦めなくて。そんな時、なごみが姉さんたちに言ってくれたんだよね」

「なんて言ったかまでは、覚えてないな」

「環くんがテレビに出たらイヤ! 誰かに取られちゃう! って。わんわん大泣きしながら」

 
 わわっ私、そんなワガママ言って泣いたの?


「忘れて欲しいよ……幼稚園児だったとはいえ、恥ずかしすぎだから……」

「俺は箸もうまく持てないガキだった。でもガキながらに思った。なごみのことが大好きで、ずーっとずっと一緒にいたいなって」

「……環くん」


 嬉しいよ。

 幼稚園の頃から、私のことを大事に思ってくれていたんだね。