「じゃあ私にキスしたのって……」

「なごみの唇に押し当てたチョコを食べたら、なんか無理ってなっちゃって。理性がフッ飛ぶって本当にあるんだね」

「りっ、理性?」

「なごみの唇の本当の甘さを、触接確かめたくなって。なごみを自分だけのものにしたくてしょうがなくなって。欲望を抑えきれなかったんだ。それで……チュって……」

 
 たっ、環くんやめて。

 真っ赤な顔を隠すように、口元を手で覆って。

 恥ずかしそうに私から視線を逸らすなんて。


 照れって空気感染しちゃうんだよ、知ってた?

 モジモジしてる環くんを見ていると、私の心臓がバクバクで逃げ出しそうになっちゃうの。

 絶対に耳まで真っ赤になってるよ、私。


 でも……


「よかったぁ。環くんに嫌われていなくて……」


 たくさんの思い出がつまった私の初恋。

 悲しみの豪雨に流し捨ててもらわなくて、本当に良かった。