「してないよ。俺が見てた。この目でちゃんと。花音にも事実を話したけど……」

「……信じてもらえなかったんだね」

「反発したよ。カメラアングルのせいで、そう見えるだけでしょ? 知り合いに動画を消すようにお願いしてって。でもあいつは首を立てには振らなかった。付き合ってくれないと、なごみが犯人だっていう動画を両親にも見せる。ネットにバラまく。そう脅されて、俺は……」

「好きじゃなかったっていうこと? 環くんは花音ちゃんのことを」

「ああ」

「でっでも……環くんが笑顔を振りまくのは、花音ちゃんだけだったでしょ?」

「彼女だけを特別扱いする彼氏でいることが、動画をバラまかない条件だったからね。それに彼女も、俺を好きなわけじゃない」

「えっ? そんなはずは……」


 猫なで声で環くんにベタベタしていたのは

 『珠須島環は私だけのものです』

 と、学園中の生徒にしらしめたい独占欲だと思っていたけど……違うの?


「アイツが欲しいのはキラキラな肩書」

「肩書?」