私の肩から両手を離した環くん。

「なんだよ……それ……」

 頭を抱えながら、暗がりの地面にしゃがみこんでしまった。


「3年間も恋人ごっこに付き合ってきたのに、あいつは初めから、俺との約束を破っていたんだな……」


 苦しそうなぼやき。

 私はただただ、環くんを見下ろしたまま立ち尽くすことしかできない。


 あいつって、花音ちゃんのことだよね?

 恋人ごっこってなんだろう?

 約束を破ったって、どういうことなんだろう?


 固まっていた私の視線が、悲し気に揺れる紫髪を追いかける。

 立ち上がった環くんはダルそうに数歩ふらつくと、病院の外壁に背中を預けた。

 引き寄せられるように私は距離を詰め、斜め前から、うなだれる環くんの様子をうかがう。


「俺も3年前に、花音に言われたんだ。なごみが修也を突き落としたのを見た人がいる。証拠動画もあるって」

「私はそんなこと……」