「修也くんが土砂降りの中で階段を駆け下りたのは、私のせいだよ。私が階段で叫び声を上げなければこんなことにならなかったのにって、申し訳なく思ってる。でも酷いよ。環くんも修也くんの家族も。みんな私だけを責めるなんて…… 私は突き落としたりなんかしてないのに」
「なごみが突き落としたって…… それ、誰に言われたの?」
「私が疑われていること、環くんは知っていたくせに」
修也くんの妹の彼氏なんだから。
「だから、誰に言われた?」
信じられないと言わんばかりの焦り顔で、私の両肩を掴まないで。
大好きな顔が真ん前にあるんだもん。
心臓がドキってうずいて、か細い声しか吐きだせなくなっちゃう。
視線が絡まるのが怖くて、涙目を伏せた私。
環くんはひざを曲げ、私の表情を覗き込んでくる。
「俺に本当のことを教えて」
「私が悪意を持って修也くんの背中を押したところを見た人がいるって、花音ちゃんに言われた。花音ちゃんの知り合いの証言を、修也くんのお父さんとお母さんは今でも信じてる。私を犯罪者だと思いこんでる」