舌打ちとともに、掴んでいた私のリボンから手を離してくれたけれど


「自分だけ高校生活をエンジョイして何とも思わないの? 修也は中2からこの病院のベッドで眠り続けているの! もう3年も目を覚まさないの! 全部あなたのせいでしょ!」


 彼女の怒りは収まらなくて


「なんで修也は、こんな子を好きになったのかしら。母親の私に相談してくれていたら、こんな女はやめなさいって口を酸っぱくして拒否したのに!」


 入院患者用の病棟内で大声を張り上げられない代わりに、恨みをこめたこぶしをドア枠にグリグリとねじ込ませている。



 この人は修也くんのお母さんです。

 息子が意識不明のまま、3年も眠りについたままなんだもん。

 悲しみと怒りを誰かにぶつけたくなる気持ち、もわかるけれど……
 

 私が修也くんを地獄に突き落とした犯人だと、家族全員で思い込むのはやめて欲しい。

 修也くんの事故状況を、私は嘘偽りなく説明したはずなのに……