「配慮が欠けていました。ごめんなさい」


 私は瞳を陰らせながら、直角になるくらい深く頭を下げる。

 低姿勢で誠意を見せたところで、この人の怒りは収まらないのはわかっている。

 とりあえず『ごめんなさい』を連呼しよう。

 罵倒を数分耐えしのげば、この人の怒りは台風級の荒波から、船が通る時にできる大波くらいにトーンダウンすると思うし。


 私はギュっと、肩にかけているスクールバックのひもを握り締めた。

 メンタルが病まないように、心のザラザラをごまかしたいな。

 バッグのヒモにぶら下げておいたカンガルーのぬいぐるみを、癒しがわりにさすってみた。

 フワっとうかんできた、おせっかいだけど心優しい購買のおばちゃんスマイル。

 下落中のメンタルが、ちょっとだけ浮上する。