なんてビクついている間に、目的地に到着しちゃった。

 コンコン。

 拳を軽く当て、真っ白いドアをノックする。


「こんにちは」


 返事はない。

 見えないドアの向こうは、静けさが広がっているらしい。


 良かったぁ。

 今日もご家族はいないっぽい。


 安堵をしみじみ味わうように、ホッと胸をなでおろした……

 はずだったのに……

 
「チッ」


 壁を通り抜け聞こえてきたのは、悪意まみれの舌打ち。
 
 一瞬で、私のメンタルがガチガチに凍りつく。

 
 怒り交じりの足音がドアに近づいてきたと思ったら、引き戸が勢いよく開いて。

 私の目の前に、黒髪ショートの女性が現れたんだ。

 年齢は40なかばくらい。

 私が一番、鉢合わせしたくなかった相手です。

 その方はひたいの血管をピクピクさせながら、燃えそうなほど熱い怒りの視線を私に突き刺してきます。