「あらら悪かったね。若い子の心の機微(きび)なんて繊細なものに疎いもんで、わたし。」

「……」

「今どきの子は、おばちゃんからのおせっかいなんていらないんだっけね」


 やめて、やめて。

 孫を慈しむおばあちゃんみたいに優しく微笑まれたら、よけい涙があふれちゃう。

 親切心を無下になんてしたくない。


 心が痛んでいる時にかけられる優しい言葉は、涙を作り出す誘発剤なのかな?
 
 おばちゃんの前に立ったままの私は、無言で大粒の涙をボロボロと流してしまう。

 
「あんた、そんな涙顔で教室なんか戻れんでしょ?」


 っ、そうだけど……


「気ぃ済むまでここにいればいい」


 えっ?


「あそこに高く積んであるパンの空箱タワーの後ろ、秘密の隠れ家に使っていいでね」

「……」

「業者が空箱を取りに来るのは明日の朝。どうせこの場所は、パン売ってる時間以外、あんまり生徒が通らんから」