涙でしめった顔を長い髪と手のひらで隠し、廊下を進む。

 もうお昼のパン販売は終了したんだろう。

 昼休み前半まではいつも大賑わいの購買部の前は、生徒が誰もいない。


 ヒャッ!


 肩が跳ねてしまったのは、パンが入っていた空ケースを抱えている購買のおばちゃんと目が合ったからで。

 自分の親より、一回りくらい年上かな?

 エプロン姿でニコニコのおばちゃんに手招きをされ

 ――目が合ったのに、無視なんて心苦しいよ。

 フッと沸いた罪悪感の抗えず、おばちゃんに近づいてしまった。


「あんた、どうしたん? 何泣いてるん?」


 私の両肩をガバッと掴んで、心配そうに腕をさすり始めてくれたけれど……

 ごめんなさい。

 今は誰とも話したくないんです。

 そっとしておいてほしいんです。

 私はおばちゃんから視線をそらし、1歩後ろに逃げる。