「なごみ、どうしたの?」


 慌て声を震わせた環くんが、椅子から降りて私の目の前にしゃがみこんでくれたけれど。

 私の乱脈は静まらない。

 嫉妬心が見苦しく暴れ出し、怒りがこみあげてくる。


 環くん、なんで?

 仲良しだったあの頃に戻ったように、なぜ心配げに私の肩に手を乗せているの?

 この3年間、ずっと私のことを無視してきたのは環くんでしょ?


 やめてよ。

 花音ちゃんのことが大好きなら、私に優しくしないで。
 

「恨んでいるんでしょ……」

「えっ? 」

「大嫌いなんでしょ……私のこと……」

「そっ、それは違うよ!」


 凛とした否定とともに強く揺さぶられた、私の両肩。


 お願い、もう私に関わらないで!

 環くんに優しくされると、選ばれなかった自分がみじめになって苦しくてたまらないんだから!


 言葉にできない想いの代わりに、涙がひっきりなしにあふれてきて

 「やめて!」

 肩に乗っている環くんの手を、私はうつむいたまま思い切りふり払う。