涙がこらえきれない。

 でも泣いているなんて、環くんにバレたくない。


 声なんか出していないのに、なぜこのタイミングで顔を上げちゃうかな?


「あのさ!」


 怒り気味に眉を吊り上げながら、環くんが上体を起こした。


「……えっ?」


 私が泣いているなんて、環くんは想像もしていなかったんだろう。

 困惑げに表情を固めたまま、環くんは私を見上げている。


 私は椅子に座る環くんの隣に立ち尽くしたまま、大粒の涙をボロボロボロ。

 ヒックヒックと肩を跳ねあがってしまうのは、こみあげる嗚咽をせき止められないからで。

 荒ぶる呼吸のせいで、うまく息が吸えなくて。

 まるで過呼吸のよう。

 私はハァハァ言いながら、崩れるように床にしゃがみこんでしまった。