私は瞳を陰らせながら、重い腰を上げる。

 太ももに力を入れ、ため息を「はぁぁぁ……」


 告白してフラれる前まで、私の足は環くんに近づきたくてウズウズしまくっていた。

 校内で環くんを見つけた瞬間、廊下をバタバタと走りだして。

 幼なじみの特権を、最大限におしみなく行使。

 環くんの腕に自分の肩をぶつけながら、人目も気にせずのおしゃべりは日常茶飯事で。

 その逆もよくあって。

 環くんもよく、私のところに駆けてきてくれたんだ。


 いつの間に私の足は、こんな臆病になっちゃったんだろう。

 環くんに近づくのが怖い。

 冷たい瞳を向けられ、そっけない態度を取られるのが怖い。

 今以上に嫌われるのが極端に怖いんだ。


 いまだジクジクで完治されていない失恋の傷跡。

 かばうように、私は心臓に手を当てる。

 重い足をなんとか前にすすめ、カウンターに顔を伏せている環くんのすぐ後ろまできた。