そっかそっか。

 野いちご学園高等部2年・雨宮なごみ。

 私は、花音ちゃんのお兄さん『修也(しゅうや)くん』のもので……って。


 えぇぇぇぇ?!

 待って待って!

 クラスメイトに変なこと言わないで!


 自分の席に座ったまま下唇に拳を当て、落ち着きなく視線を泳がせる私。

 動揺が伝染して、体がフルフルと小刻みに揺れてしまう。


 オロオロとうつむくこと、約10秒。

 現実と向き合わなきゃと視線を上げてはみたものの、すでに手遅れのもよう。

 10人ほどのクラスメイトが、私を取り囲んでいて


「なごみちゃんって彼氏いたんだ」

「えっ?」

「いつから付き合ってるの?」

「そっそれは……」

「花音ちゃんのお兄さんなら、絶対にイケメンだよね? 顔見たいな」


 恋バナを期待する女子の口から飛びだす質問の数々に、私はなんて答えていいかわからない。