「そのチョコ、全部食べていいから」


 そっけない声を落とし、私に背中を向けた環くん。

 彼が自分の席に戻ったころ、今度はバタバタと跳ねる足音が近づいてきた。

 そして私の机の真横で足音がピタリ。


 ――ん、誰?


 私は視線を右肩の方に上げる。

 立っていたのは環くんの彼女・花音(かのん)ちゃんで。

 なぜかな?

 ムッとほっぺに空気を詰めこみ、黒川君を睨みつけている。


「黒川先輩、なごみ先輩に近づかないでもらえますか!」


 すっすごいな、花音ちゃん。

 黒川くんより1歳年下の高1なのに、堂々と自分の主張を突き刺せるなんて。


 ……って、、、えっ?

 なぜ今、私の名前が出てきた?


 
 これには黒川くんも、黙っていられなかったらしく


「なんで俺は、珠須島(すずしま)の彼女の指示に従わないといけないわけ?」


 と、腕組み仁王立ちでご立腹。


「なごみ先輩は、私のお兄ちゃんのものなんです!」