もしかして環くんは、私を助けてくれたの?

 二人の喧嘩を沈められなくて、私が困っていたから……


 なんて、そんなことあるわけないよね。

 私は環くんに嫌われているわけだし。


 あっ、環くんが私に背中を向けた。

 待って、まだ行かないで。


「あっあの……環くん……」

「なに?」


 足を止めて振り返ってくれたけど、やっぱり環くんは機嫌が悪そう。

 大嫌いな私と関わりたくない。

 笑みが一切ない不機嫌顔にそう書いてある。

 それなのに……


「えっと……このチョコの山は……?」

 
 オロオロしながらの私の問いに


「なごみは好きでしょ? このチョコ」


 サラッと私の名前を呼んでくれたんだもん。


 名前を呼ばれたのなんて、失恋した中2以来……

 3年ぶりなんだけど……


 嬉しさよりも、信じられないという驚きの方が勝ってしまい


「……あっ、うん」


 時間差で込み上げてきたドキドキに対応しきれなかった私は、スッとうつむいてしまったんだ。