耳に飛び込んできた、ビニール同士がこすり合う音。

 美和ちゃんと黒川君も、今の音でハッと我に返ったんだろう。

 二人とも言い合い熱を鎮火したかのように、口をつぐんでいる。


 二人を気に留めている場合なんて、今の私にはなくて。

 私の目のすぐ真ん前にある、お菓子の大袋が気になってしょうがなくて。

 開いた袋からいくつも滑り落ちる物体の行きつく先を、全て見届けないと気が済まない。


 茶色くて四角いものが、透明なラップでひとつずつおひねりのようにくるまれているけれど。

 机の上で大きな山みたいに積みあがっているけれど。


 これって……


「甘いもの食べて、頭冷やしなよ」


 抑揚のない低音ボイスに、私の心臓がドキリ。

 慌てて視線を上げると、美和ちゃんと黒川君の間を通すように手を伸ばしていたのは……


 えっ、環くん?


 チョコの袋が空っぽになったのを確認すると、環くんは袋を小さく折りたたみはじめた。