黒川くんと私のやりとりを、黙って見ていた美和ちゃんでしたが。

 私の向かいに座ったまま、なぜかご立腹で。


「なごみの頭、バスケのボールと勘違いしてない? 雑になごみに触れないで!」


 と、怒り顔で黒川くんに人差し指を突き出している。


 美女の睨みなんて、スルーしてくれればいいのに。

 黒川君は多分、かなりの負けず嫌い。

 勝ち負けの世界に生きてるスポーツマンは、みんなそうなのかな?


「ノートのお礼をして、何が悪いわけ?」

 と、黒川くんは凛々しい顔をこわばらせていて

 美和ちゃんも美和ちゃんで

「乱暴に頭をなでるのがお礼? 勘違いしてる男子って、ほんと痛すぎ」

 ドバドバと怒り火に油を注ぎまくっている。


 ふっ、二人とも落ち着いて。

 とりあえず座って、3人でお弁当でも食べようよ。


 ……って、仲良しピックニックができるような平穏さはどこにもないか。

 黒川くんも美和ちゃんも、頭に血が上っているみたいだし。