「オマエ、まじで字が綺麗すぎ。すげー見やすかった」

 
 彼は明らかなる陽キャくんです。

 クラスいち明るい人気者と言っても過言じゃない。


 平穏を好む私は、ワチャワチャの代表みたいな黒川くんとはタイプが違いすぎ。

 今までほとんど接した事はなくて。


 ただ昨日は

 『今日の日直、休んでた黒川にノートを写させてやって』
 
 と先生に頼まれたから、ノートを一晩貸しただけで……


「こんな見やすくノートまとめられる人間、この世に存在してたのかよ。早く言えよ」

 
 黒川くんはノートを私の机に置くと、髪が乱れ絡まりそうなほど豪快に私の髪をクシュクシュしてきた。


 ――スポーツ系陽キャ男子の距離の近さ、ちょっと苦手だな。


 こみあげてきた本心を、私はのどの奥にひっそりと隠して


「黒川くんの役に立ったなら、よかったよ……」


 ひきつり笑いだけど、一応ニコっ。

 上体を窓の方に傾け、そそくさと自分の頭を黒川くんの手のひらから避難させる。