目の前に座る親友に、甘えすがろうと思ったのに……


 「ひゃっ!」


 急に揺れだした私の頭。

 もちろん私の意志で揺れているんじゃない。

 三半規管のバグで、平衡感覚が失われたわけでも無くて。

 
 ――誰かに、後頭部を掴まれてる?


 ギョッとして、椅子に座ったまま恐る恐る視線を上げる。


 ――ひゃい?!


 いつの間にか私の机の真横に、クラスメイトが立っていた。

 大人っぽい漆黒のウエーブ髪。

 長めのえりあしをワイルドっぽく首後ろで縛っているのは、梅雨ジメジメで暑いからなのかな?……なんて。

 今はそんなこと、どうでもいいよね。


雨宮(あめみや)、世界史のノートサンキューな」

「くっ、黒川くん」


 彼はバスケ部の次期キャプテン

 黒川 (ひびき)くん。


 白い歯を輝かせながらの笑顔はまさに、試合に勝った時のようなさわやかさだ。

 ……って表現しちゃったけど、やっぱり違ったみたい。

 私をいじりたくてウズウズしているようにも、見えなくもなくて。