「環くん、お弁当作ってきたよ。一緒に食べよう」


 教室に漂う楽しそうな天使声。

 清らかすぎて遠くまでよく響くんだから、もう。

 二人にしか聞こえない弱ボリュームで、会話してくれればいいのに。

 なんて思っちゃう私は、やっぱり心が狭いのかな?

 
「約束してなかったよね? お昼を一緒に食べるなんて」

「サプライズだよ。恋人同士には刺激が大事でしょ?」

「そう?」

「飽きたなんて理由で、私は環くんに捨てられたくないの」

「アハハ、なにそれ」


 ほんと仲良しカップルって感じ。

 一つ年上の環くんに、可愛い彼女がべったり甘えるベタな構図。


 何を見せられているんだろうな、私は。

 って、私が勝手にあのカップルを瞳に映しちゃっているだけか。


 一番後ろの窓ぎわに座る私の位置からだと、黒板横の廊下の入口なんて対角線上で遠いわけだし。

 大好きな親友とおしゃべりをしていれば、環くんのことなんて気にならないはず。

 助けて、美和ちゃん!