美少女の近くにいた男子が、教室中に響く大声をあげた。


 ダルそうな顔で、窓の外を見つめていた環くん。

 椅子に座ったまま顔だけを入口に向けると、こわばっていた表情が一変。

 春のお花のように、口元をふわっ。

 彼女を瞳に映しながら、優しく微笑んでいる。


 環くんは嬉しいんだろうな。

 大好きな彼女が、お昼休みにわざわざ教室まで会いに来てくれたこと。


 私の予想は大正解だったみたい。

 環くんは椅子から立ち上がると、入口に向かって歩き出した。


 私は一番後ろの席に座ったまま。

 紫髪の美少年の表情を、異常なほどじっと見つめてしまい……

 心がジクジクと痛むクセに、目がそらせられなくて……



 ――環くんって、彼女にだけにはあんな優しい顔で笑うんだよね。



 嫉妬心と敗北感。

 絶望とうらやましさ。

 いろんな負の感情に飲み込まれそうになり

 痛みでごまかそうと、私はおもいきり腕をつねる。