「お弁当食べよっか」と、バックハグ解除で私から離れた美和ちゃん。

 私の前の席の山田君の椅子に手をかけると、「借りるね」と言いながら椅子を回転させた。

 美和ちゃんは椅子の持ち主がどの男子かも、わかっていないみたいだけど。


 私が自分の席に腰かけると、私と向かい合うように美和ちゃんも椅子にお尻を沈めた。

 机に両ひじをついた美和ちゃん。

 口の動きを私以外にバレないように、両手でメガホンを作っている。


「あのさ、なごみ」


 すっごいコソコソ声だ。

 美和ちゃんの秘密でも暴露してくれるのかな?


「見すぎだったよ」

「ん?」

珠須島(すずしま) 環のこと」