誰にも笑顔を見せない?

 間違えました。

 一人だけいました。

 この学園で環くんが心を許している相手。


 それは……



「な~ごみ」

「ギャァァァァァ!!!」

 
 突然のヒヤリにビックリして、椅子から立ち上がっちゃった私。

 なっ、なに今の?……と、とっさに首に手を当てる。

 冷たいものが、私の首すじに押し当てられたんだけど……


「アハハ、予想以上の可愛い叫び声。今日もいただいちゃいました。ゴチ~」


 止まらぬヤンチャ笑いを、私の背中にぶつけているのは……


「みっ、美和ちゃん!」


 振り返った私の瞳に映ったのは、ストレートボブの美女

 日向(ひゅうが) 美和(みわ)ちゃん。


「なごみのオーバーリアクションが毎度毎度かわいすぎて、驚かすのやめられないんだよね」


 なんて言いながら、冷えたペットボトルを顔の横で揺らし、大爆笑しています。

 小柄な私より10センチ以上背が高い美和ちゃんは、後ろから私にガバっと抱き着いてきた。


「寂しかった? 早く私に会いたかった?」


 私の肩に沈ませるように、頬をスリスリとこすりつけてくる。