「似たお顔の伯蓮様も、いずれそうなってしまうんでしょうか……?」
「な、なんのことだ?」
「たくさんの妃にモテモテの伯蓮様はやがて酒と女遊びにうつつを……」
「抜かすわけないだろうっ、私は鮑泉様のような不純な行いは……はっ!」

 そう宣言した途端、貂々の激憤混じりの視線が鋭く向けられた伯蓮は当惑する。
 本人を目の前に批判するような言葉を発してしまったが、伯蓮のセリフには続きがあった。

「……私は、強いていうなら朱璃だけに、うつつを抜かしたい」
「え……え⁉︎」
「他の妃なんていらない、朱璃だけで私は充分満足できるっ」

 少しいじけたように口先を尖らせる伯蓮の頬は赤く、つられて朱璃も顔を熱くさせる。
 そうして恥ずかしそうに俯いた二人を眺めて、二度目の「何を見せられているんだ」状態の貂々。
 すると突然、窓から一羽の鳩が飛んで入ってきたのだが、みんながよく知る三々だった。

「貂々ー! あれ、朱璃と伯蓮も来てたのか」
「うん。三々は貂々に会いに?」
「ああ、ここが新しい貂々の棲み家になったみたいだからな」

 今までは尚華の見張りのために華応宮に居座り、中庭の木の上が定位置だった貂々。
 その役目が終わり、ついに新しい棲み家をここに決めたらしい。
 自分の塑像が祀られた廟を選ぶとは、貂々もなかなか自分のことが好きなんだと朱璃も嬉しくなった。

「じゃあ私もたまに遊びに来るね!」
「お前は蒼山宮でしっかり働いていろ」
「んもー、そんな照れなくていいじゃん」
「くっ……それより三々! 用件はなんだ!」

 朱璃を相手にすることに疲れた貂々が、話題を変えるため三々を頼る。
 ハッと話題を思い出した三々は、神妙な面持ちで語りはじめた。

「さっき妙な噂を聞いたんだよ。昨夜、二匹の栗鼠系あやかしが仲良く官庁街を散歩していたら……」
「官庁街を散歩していたら……?」
「なんだ、朱璃も興味あるか」
「もちろん、あやかし大好きだからね!」

 満面の笑顔を咲かせて三々の話を聞こうとする朱璃と、その隣で不穏な様子の伯蓮が腕を組む。
 あやかしというだけで「大好き」と言われることに、嫉妬心が湧き立つのを必死に堪えていた。
 三々はそんな伯蓮の様子を察しながらも、話の続きを語る。