社長室
社長「優花…いい?私から言うことはただ1つよ。絶対正体がバレないようにして。正体が1人にでもバレたら即退学だからね!」

歌「うぅ、は、はい。わかりました。」

みなさん、はじめまして、私は輝宮優花です…ってあぁ、美詞歌って言った方が分かりやすいかな…?

私は一応芸能活動をしているんだけどここにいるのは私の所属している事務所stritの社長。

社長っていうかほぼ2人目のお母さんみたいでとても頼りになる人。

社長「そ・し・てもちろん恋愛なんてご法度だからね?」

歌「は、はい!」

こうは言ったものの…アイドルってやっぱり恋愛ダメなのかな…?

社長には悪いけどそれは約束できないと断言できる。って、その話は置いといて…

歌「あ、あの…社長、もしかしてへ、変装とかってするんですか…?」

社長「はぁ!?するに決まってるでしょ!」

や、やっぱり…。予感が的中し、ショックを受ける…。

歌「でも私オーラとかないし、へんそうしなくてもいい気が…」

社長「はぁー、いい加減自分の美貌を自覚しなさいっていつも言ってるでしょー!?」

美貌…?自分には縁がない言葉すぎてびっくり。

社長はたまによくわからないことを言う。

歌「?」 

社長「はぁー、もういいわ。で、はい、どうぞ。」

歌 社長からすっと渡されたのは黒いコンタクトにボサボサの茶色のウィッグと芸人さんが付けていそうな黒縁メガネ、そして…大きい黒マスク…。

「え、いやいやいや、こんなにいりますか…!?」

社長「優花の美貌を隠すにはこれくらいしないと…本当は帽子も用意しようと思ったけど…流石に怪しいでしょ?」

歌「確かに…。」

社長「じゃ、早速つけてみてちょうだい。」

歌「は、は〜い…。」

はぁ〜着るとは言ったけど本当にこれいるのかな…?

社長は気を遣ってオーラ?があるとかって言ってたけど…まぁ、面白そうだし、着てみよう!

社長「歌〜!どう?着替えた?」

歌「は、はい。」

うぅ、これ大丈夫かな…?

社長「あら〜!いい感じね。優花の可愛いさが隠れきってるわ。」

歌 ん…?可愛いさ…?

よく分からないけどうまく変装できているなら良かった…。変装には不安があるけど…今から始まる新しい生活が楽しみになってきたなぁっ。



入学式当日
歌「社長!送迎ありがとうございますぅ!大好きです!」

社長「はい、はい。それじゃ帰りもここで待ってるわね。」

歌「はーい!」

社長と別れる名残惜しい気持ちを抑え、私は改めて学園の校門に立った。

私が星ノ宮学園にわざわざ入学するのは理由がある。そう…初恋の人に会うため。

回想 初恋

私は自分の容姿が大嫌いだった。

常人離れした水色の髪も、悪目立ちしてしまう青紫の瞳も。今までこの容姿のせいで私は怖がられたり、いじめられたりしていた。
「お前の髪、気持ち悪すぎだろ〜www」

「なに、その目、気色わるっ。まじ宇宙人かよw」

「ゆ、優花ちゃん…ち、近づかないでっ…こ、怖いっ…!」

私だって別にこんな見た目になりたくてなってるわけじゃないのに。

何でこんなことを言われなきゃいけないの?私って…生まれてきてよかったの…?

こんなことを考えているうちに私はどんどんおちぶれていった。

もう何もかもどうでもいい。当時小学3年生だったわたしにはメンタル的にもギリギリだった。

「私なんて…生まれなきゃ良かったのになぁ…。」

そうこぼした一言。

「わぁ、君の髪とっても綺麗だね〜!」

え?だ、誰?っていうかこの子、すごい綺麗な容姿をしている…。

クリーム色の柔らかそうな艶髪にエメラルドを詰め込んだようなキラキラな瞳…。

ま、まるでおとぎ話から出てきた王子様みたいっ…って今この男の子なんて言った?

「わ、私のこと怖くないの?」

怖いに決まってる。こんな宇宙人みたいな見た目…。

「えぇ?どこが?君の髪天使みたいで綺麗だし、瞳も…ラピスラズリーみたいっ…。」

…っ!この男の子の瞳はとても澄んでいて嘘やお世辞をついているようには思えなかった。

「僕、君みたいな可愛くて綺麗な子初めて見たよ〜!僕とお友達になってくれない?」

これまで家族以外誰も私を認めてくれなかったのにっ…。

なんでこの男の子は私の欲しい言葉をくれるんだろう…?気がついたら頬に涙が伝っていた。

「えぇっ!?な、何で泣いてるの?あ、ごめん!急に友達とか言われても困るよね…。」

「ち、違うの…。今まで友達1人もいなかったから…あの、う、嬉しすぎてっ…。」

私こんな幸せで良いのかなっ…。

「はぁ…?可愛すぎるんですけど…。」

え…?私の聞き間違い…?

「あ、あの…あなたの名前は…?」

初めてできるお友達のことを早く知りたかった。

「あぁ、僕は野薔薇純羽だよ。」

わぁぁ、名前まで王子様みたいっ…。

「君は?」

「わ、私は輝宮優香です。」

「ふふっ、敬語可愛い。」

 そう言って微笑む純羽くん。

「…っ!」

あ、あれ…?おかしいな…。今胸がドキっとしたような…?

私達ははすぐに仲良くなった。

純羽くん転校生で案の定、すぐにクラスの人気者になってしまった。

でも、純羽くんは変わらず私と仲良くしてくれて、いつも守ってくれた。

それは三年たった今も。…今までの人生の中で一番楽しい時間だった。



でも…こんな幸せな日々も長くは続かなかった。



もう少しで中学校に入学する季節になったある日。

「優花。大事な話があるんだ。」

あれ…?珍しく真面目な顔をしているあやくんに私の背筋が凍った。

「う、うん。どうしたの?」

できるだけ明るい顔でそう、うなづいた。

「実は…僕アメリカに留学しないといけないんだ。」

ア、アメリカ…?想像以上の遠さに驚いてしまう。

「急な報告で本当にごめんね…。」

そのあとあやくんは事情を話してくれた。

家の都合とあやくんの行きたい高校に行くためには、留学することが必須ということで中学から留学することを決意したと言う。

「そ、そうか…。あ、あはは。す、すごいよ、あやくん!留学なんて…。私、応援してる!」

あやくんが野薔薇財閥の御曹司というのは知っていたから…少し予測はしていた。

この言葉に嘘はなかった。

本当にあやくんには幸せになってほしいし、したいことをしてほしい。

それが例え…私からはるか遠いところでも…。

「優花は僕が留学しても全く悲しくないの?」

え…?思いもしなかった言葉に困惑してしまう…。

「悲しくなんかないよ!あやくんが幸せだったら私、幸せだから。」

本当は…すごい悲しい。

だけどそんなの所詮自分のエゴであって、こんなことであやくんを止めてはいけない…。

あやくんは私の中での王子様で、好きな人…。絶対に困らせたりしたくない…。

そしたらあやくんが

決心したように口を開いた。

「優花…、僕は優花が好きだ。」

「ふぇっ…。」

え…?突然の告白に間抜けな声が出てしまった。

あやくんも顔が真っ赤で自分の発言に驚いているようで困惑していた。

でも、しっかり気持ちを伝えてくれた。

「3年前から…一目惚れでした。」

…っ。嬉しすぎる…。もうそのひと言だった。

「わ、私も…純羽くんが好きです…。」

ポロッとこぼれた本当の気持ち…。

「え、ほ…本当に!?」

「う、うん…。」

この日を私は一生忘れないだろう…本当に生きていてよかったって心から思った。

そしてこの日あやくんは約束をしてくれた。

「3年後絶対に優花を迎えに来る。どこにいても僕が必ず見つけるから。」

「うん…!」

この日に誓った約束…今果たしに行くからね…!

待っててね…あやくん!