「そうじゃないんです」
返品や交換ができればどれほどいいだろうと思いつつ、私は左右に首を振った。

「あのピエロはどこで買ったものなんですか?」
「購入店を知りたいのか? 悪いけど、俺にもかわらないんだ」

「わからないってどういうことですか? あのピエロはお人さんのものじゃないんですか?」

聞くとお兄さんは首を振って「正直に話すよ、あれは拾ったものなんだ」と、答えた。

私は目を丸くする。
「拾った? あの人形をですか?」

お兄さんがピエロを欲しがって拾うなんてとても思えない。

「そうだよ。前回古物市に来る前に偶然ゴミ箱の中に入っているのを見つけたんだ。人形が捨てられているなんて珍しいからなんとなく近づいて行って、状態が良かったから商品になると思って拾ったんだ」

「じゃ、じゃあ、お兄さんもあの人形の出どころを知らないんですね?」