健太がピエロが逃げていった方向を睨みつけて呟く。

「それに、あのタイヤで轢かれたくらいでこんな大きな怪我をするなんてありえない」

健太が私へ視線を向ける。
私は立っていることがやっとの状態だ。

「ピエロは動きが鋭くて鉄壁ってことか。俺たちにとってかなり不利だな」

「そういうことになる。綾が襲われたときにはまだそれほど動きも早くなかったし、力もよわかったからかすり傷ですんだのかもしれないな」

ピエロはだんだんと強くなっている。
それも凄まじい速さでだ。

ふたりの会話を聞いて背筋に冷や汗が流れていくのを感じた。
「千夏。今日は俺が家まで送っていく」