このまま通り過ぎていってくれればいいけれど、ピエロは周囲を伺うように時折止まっているのがわかった。

ここにいれば全員が見つかってしまう。
私は勇気を振り絞って立ち上がった。

そのままの勢いで庭から道へと飛び出した。
「ここよ!!」

叫び声をあげ、バッドを両手で握りしめる。
近づいてきたときにバッドで殴りつけるつもりだった。

だけどピエロは目にも止まらない速さで私の前までやってきていた。
「えっ」

反応できたときにはタイヤが私の右足を踏んでいたのだ。
片手で持てるくらいの人形に、安っぽいタイヤ。