私は大きな民家の前で立ち止まり、その玄関のノブに手を伸ばした。
ガチャガチャと何度も回して見るけれど、びくともしない。

「ダメだ。玄関も窓も閉まってる!」
隣の家を確認していた竜二が言う。

「こっちもダメ!」
更に綾も絶望的な声で言った。

カーポートに車がある家でも、中に人はいなかった。
「一旦隠れよう!」

健太の提案で、私達は大きな庭に駆け込み、身を縮めた。
ピエロの音楽は徐々に近づいてきているから、長くは隠れていることもできなさそうだ。

「やっぱりここは現実の世界じゃないんだ。ピエロが作り上げた異世界かもしれない」
一番現実主義の健太がそんなことを言いはじめた。